悠生 朔也

こんにちは、綴り手の悠生 朔也(ゆうき さくや)と申します。 日々の中でふと零れ落ちた感情や、 言葉になりきらなかった風景を、ひとつひとつ、そっとすくい上げています。 この場所では、そんな断片たちを形にして作られた物語たちを飾っています。 完成や正解ではなく、ただ「そこに在る」。 その静かな揺らぎを、誰かと分かち合えたら嬉しいです。

ルピナスの掌

 緋翔が涼に初めて髪の毛を染めてもらってから、数ヶ月が過ぎた。 あれから事件は発覚したニュースもなければ、これといった騒ぎにもなってもいなかった。  滞り続けている家賃に、大家がしびれを切らすタイミン ...

痛みのローズマリー 《前編》

「みてみて、涼!すっげぇ~!!」  緋翔はそう叫ぶと、バタバタとその両腕を揺らした。  オーバーサイズの薄い灰色のカーディガンが、その度にふわふわとその腕を滑る。 真っ白のTシャツから伸びる長い首には ...

理想の死の為に

2025/12/12    , , ,

 私は、人生の半分を【自己否定】に費やしてきた。  小さいころは「可愛いね」とか「将来が楽しみ」だなんて言われていた。  小学校の中半頃になると、私は太りはじめた。  同時に、「可愛い」という存在に憧 ...

朽ちたベラドンナに咲く

 涼はきっと、気が付いている。  あの日、あの人から言われた言葉が、ずっと頭の中を回って巡って、涼の顔を見る度に自分の居場所を探すようになってしまった。  あれからどれくらい時間がたったのか、もうよく ...

人体実験 3ヶ月目

2025/12/3    ,

人体実験レポート 期間 2025/8/28~2025/11/29現在 【実験内容】 ・スクワット20回×2 ・プランク 20秒 ・スキンケア 朝夕2回 ・小顔ベルト 20分 ・水分(ゴボウ茶と麦茶)  ...

ベラドンナの罰

 大学の図書館に一人、涼はゆったりと座りながら本をめくる。  本の表紙にはソクラテスの弁明と書かれている。 それをじっくりと、かみしめるように眺めては、無表情のまま、ペラリと頁をめくった。  緋翔の様 ...

透明なベラドンナ

 翌朝、涼は緋翔の寝顔を見つめながら、内側からふつふつと湧き上がる感情に、ただ黙った。  緋翔はベッドの上で、まだ静かに寝息を立てている。  もうすぐ朝食の時間。 いつもなら、涼よりも早く起きている事 ...

理解されにくい自分でいる事

2025/11/19  

私には昔から、 言葉や音に“深度”を見てしまう癖がある。 軽いものは、耳の奥に入る事もなく流れて消えて、 重いものは、胸の底に沈んでいく。 その沈み方で、感情の本気度を見てしまう。 音楽もそう。 メロ ...

ベラドンナの鏡

 喫茶店を出てから、ぼんやりと通りを歩いて、気が付けば、涼と出会った公園まで来ていた。  木々が生い茂り、人の視線の届かない、湿った地面の上に腰を下ろして、膝を抱える。 手に持っていたビニールの袋は、 ...

感じる時間、老いる身体

2025/11/14    , ,

時間の概念は、人によって同じではない。 それは、人間だけではなく、生き物全てに言える事だと思う。 1年、365日(366日)、8760時間(8784時間)。 数字としてみたら、同じのように見える。 で ...