悠生 朔也

こんにちは、綴り手の悠生 朔也(ゆうき さくや)と申します。 日々の中でふと零れ落ちた感情や、 言葉になりきらなかった風景を、ひとつひとつ、そっとすくい上げています。 この場所では、そんな断片たちを形にして作られた物語たちを飾っています。 完成や正解ではなく、ただ「そこに在る」。 その静かな揺らぎを、誰かと分かち合えたら嬉しいです。

詩と小説の狭間 —— それぞれの、答え ——

 ―— 自分の作品について思う事。  どうしても、風景とか五感をメインに書くのが好きで、  小説の定番の書き方からは逸脱していると思っている。  だからと言って、詩か?と問われたら、詩でもない。  詩 ...

ダチュラの目覚め

 放課後。 これといった部活動もしていない涼は、さっさと教室を後にした。 クラスの誰かの声が聞こえた気もしたが、振り向きもせずにまっすぐ進む。  高校からの帰り道。   校舎を抜け、商店街へと続く道を ...

太陽が昇ると、眠くなる

 私は朝早く起きるのが苦手だ。  それは昔から。 小さいころから、朝は起きられないし、夜になるほど元気になっていくタイプだった。    それでも、学生時代は比較的がんばって起きていたように思う。  ( ...

芥子の夢

2025/9/12  

 その日はやけに雲の多い夜だった。 月は分厚い灰色に埋もれ、アスファルトには外灯の灯だけが、ただゆらゆらと反射している。  僅かに、雨が降っていた。  しっとりとした水滴が、ぽつぽつと水たまりに波紋を ...

寝て見る、もう一つの日常

2025/9/10    , , ,

いつものショッピングモールを抜けたら、そこは母校だった。 翌日は、一度もいった事のないはずの、でも何度も行ったことのある場所。 そのまた翌日は、エレベーターに押しつぶされていた。 ―― これは、私が「 ...

静脈に咲く ― クロユリの芽吹き ―

 養親の二人が亡くなったのは、鷹村涼が十五歳の時だった。 もとより病気がちであった母(といっても、年齢は八十を過ぎている)が亡くなり、それから数か月後の冬に、父が他界した。  莫大なお金と土地は、実子 ...

手相と「まぁ、いっか」

「この手相がある人は、波乱万丈な人生を送ると言われてます」  これは、私が手相を見てもらった時の、先生の言葉。 右手と左手の手相が全く違うのも、なかなか珍しいらしいとの事だった。  といっても、有名な ...

紫陽花の道

 ふ、と目を覚ます。  どうやら、うたたねをしてしまっていたようだった。  開かれた窓から、暖かな日差しと、雨に濡れたクチナシの香りが髪を撫でていく。  ライトグレーのソファは、最近お気に入りの場所。 ...

グラデーションに生きる

2025/8/26    , ,

「前向きな考えでいいね」 と、人に言われるたびに、自分のどこかが手招きする感覚がある。 人間の皮を被った、その内側にある自分が、 「そんなことない。 安心するのは、そこじゃない」と、笑う感じ。  外で ...

くちなしの午後

 講義中に、何度もノートの隅を赤で埋めた。    落ち着いた線で囲って、少しだけ歪ませる。 昨晩の夜の、赤をなぞるように。  横に切り裂いて、ほとばしる熱で円を描いて、流れる音楽のようにゆるやかに弧を ...