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黄色に染まる百合
2025/9/25
その日も穏やかな、赤い一日のはずだった。 涼は変わらず、何も面白味もない大学へと向かい、緋翔は家でその時間を適当に過ごす。 冬の寒さも朝方には落ち着いてきた季節。 窓辺には、これから開こうとする桜の ...
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詩と小説の狭間 —— それぞれの、答え ——
―— 自分の作品について思う事。 どうしても、風景とか五感をメインに書くのが好きで、 小説の定番の書き方からは逸脱していると思っている。 だからと言って、詩か?と問われたら、詩でもない。 詩 ...
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ダチュラの目覚め
放課後。 これといった部活動もしていない涼は、さっさと教室を後にした。 クラスの誰かの声が聞こえた気もしたが、振り向きもせずにまっすぐ進む。 高校からの帰り道。 校舎を抜け、商店街へと続く道を ...
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太陽が昇ると、眠くなる
私は朝早く起きるのが苦手だ。 それは昔から。 小さいころから、朝は起きられないし、夜になるほど元気になっていくタイプだった。 それでも、学生時代は比較的がんばって起きていたように思う。 ( ...
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芥子の夢
2025/9/12
その日はやけに雲の多い夜だった。 月は分厚い灰色に埋もれ、アスファルトには外灯の灯だけが、ただゆらゆらと反射している。 僅かに、雨が降っていた。 しっとりとした水滴が、ぽつぽつと水たまりに波紋を ...
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寝て見る、もう一つの日常
いつものショッピングモールを抜けたら、そこは母校だった。 翌日は、一度もいった事のないはずの、でも何度も行ったことのある場所。 そのまた翌日は、エレベーターに押しつぶされていた。 ―― これは、私が「 ...
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静脈に咲く ― クロユリの芽吹き ―
養親の二人が亡くなったのは、鷹村涼が十五歳の時だった。 もとより病気がちであった母(といっても、年齢は八十を過ぎている)が亡くなり、それから数か月後の冬に、父が他界した。 莫大なお金と土地は、実子 ...
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手相と「まぁ、いっか」
「この手相がある人は、波乱万丈な人生を送ると言われてます」 これは、私が手相を見てもらった時の、先生の言葉。 右手と左手の手相が全く違うのも、なかなか珍しいらしいとの事だった。 といっても、有名な ...
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紫陽花の道
ふ、と目を覚ます。 どうやら、うたたねをしてしまっていたようだった。 開かれた窓から、暖かな日差しと、雨に濡れたクチナシの香りが髪を撫でていく。 ライトグレーのソファは、最近お気に入りの場所。 ...
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グラデーションに生きる
「前向きな考えでいいね」 と、人に言われるたびに、自分のどこかが手招きする感覚がある。 人間の皮を被った、その内側にある自分が、 「そんなことない。 安心するのは、そこじゃない」と、笑う感じ。 外で ...