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訪問
その夜も、ただパソコンに向かっていた。 試行錯誤しながら、文字を打っては消し、悩みながら画面と向き合う。 膝では愛猫が心地よさそうに寝息を立てている。 今日はそろそろ終わりにしようと思った矢先 ...
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クレマチスの朝
「わ、びしょびしょ」 そう言って、緋翔は足早にバスルームへ駆け込むと、大きなタオルを涼の頭にすっぽりとかぶせた。 がしがしと乱雑に拭くその腕を掴む。 細すぎず、骨の太さがわかるよな、白い腕。 涼 ...
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ぶつかりおじさん遭遇記
先日、スーパーでのこと。 普通に、買い物をしていた。 ちょうどお菓子コーナーで、選んでいた時 ―― ドン、と勢いよくぶつかられた。 端っこによっていたし、横には通れる隙間も十分ある。 私は思っ ...
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滲むラナンキュラス
教室の窓から見える空では、雲が足早に過ぎていく。 木々の隙間から見えるその奥に、うっすらと暗い雲がゆっくりと顔をのぞかせていた。 涼はその空を、何の感情もなくただ見つめる。 遠くで聞こえる教授の声 ...
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人体実験:1か月目
「成功」か「失敗」かの二択はもう疲れた。 だから私は、自分の体を実験台にすることにした。 私は昔から太っていた。 それこそ、恐らく小学生の時には普通よりもふくよかであったし、成人してからは ...
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黄色に染まる百合
2025/9/25
その日も穏やかな、赤い一日のはずだった。 涼は変わらず、何も面白味もない大学へと向かい、緋翔は家でその時間を適当に過ごす。 冬の寒さも朝方には落ち着いてきた季節。 窓辺には、これから開こうとする桜の ...
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詩と小説の狭間 —— それぞれの、答え ——
―— 自分の作品について思う事。 どうしても、風景とか五感をメインに書くのが好きで、 小説の定番の書き方からは逸脱していると思っている。 だからと言って、詩か?と問われたら、詩でもない。 詩 ...
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ダチュラの目覚め
放課後。 これといった部活動もしていない涼は、さっさと教室を後にした。 クラスの誰かの声が聞こえた気もしたが、振り向きもせずにまっすぐ進む。 高校からの帰り道。 校舎を抜け、商店街へと続く道を ...
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太陽が昇ると、眠くなる
私は朝早く起きるのが苦手だ。 それは昔から。 小さいころから、朝は起きられないし、夜になるほど元気になっていくタイプだった。 それでも、学生時代は比較的がんばって起きていたように思う。 ( ...
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芥子の夢
2025/9/12
その日はやけに雲の多い夜だった。 月は分厚い灰色に埋もれ、アスファルトには外灯の灯だけが、ただゆらゆらと反射している。 僅かに、雨が降っていた。 しっとりとした水滴が、ぽつぽつと水たまりに波紋を ...