名もなき手帳

ぶつかりおじさん遭遇記

 先日、スーパーでのこと。

 普通に、買い物をしていた。 ちょうどお菓子コーナーで、選んでいた時 ――

 ドン、と勢いよくぶつかられた。

 端っこによっていたし、横には通れる隙間も十分ある。

私は思った。

―― これがかの有名なぶつかりおじさんか!!!

 それからの行動は早かった。

 白のTシャツ、中年、中肉中背……特徴的なぶつかりおじさんの後ろを、一定の距離をあけて追いかける。

 さながら、アイドルのおっかけである。

 おっさんが別の売り場に行けば、そちらに向かう。

 常に、彼の視界の端にはいるように位置取り、買い物も忘れず、選んでるふりをし、偶然を装う。

 やがて彼は、こちらをチラチラと確認し、挙動不審にウロウロし、

 慌てる様にレジに向かっていった。

 私は思った。

 ―― きょどるくらいなら、やらなきゃいいのに。

 相手が悪かったな、おっさん。

 またのご利用、心よりお待ち申し上げてやるぜ。

悠生 朔也

こんにちは、綴り手の悠生 朔也(ゆうき さくや)と申します。 日々の中でふと零れ落ちた感情や、 言葉になりきらなかった風景を、ひとつひとつ、そっとすくい上げています。 この場所では、そんな断片たちを形にして作られた物語たちを飾っています。 完成や正解ではなく、ただ「そこに在る」。 その静かな揺らぎを、誰かと分かち合えたら嬉しいです。

-名もなき手帳
-, , ,